労務管理の要点6…問題社員への対応策

無断欠勤や遅刻過多、勤務成績不良、職場離脱などの行為それ自体は、職務懈怠という範疇での労働義務の債務不履行に過ぎません。当該行為が就業規則違反となった場合や、企業秩序維持に対する重大な違反となった場合に懲戒処分を行えます。問題社員への対応はケースバイケースですが厳正に対処する必要があります。当事務所では法令・判例等に準拠した対応策をご提案しています。以下にその一部をご紹介いたします。

<1>女性社員からセクハラの訴えが
<2>社内の男女交際で業務に支障
<3>私用でインターネットを使った
<4>辞めた社員が顧客リストを持ち出した
<5>意味もなく時間外に会社にいた従業員が残業代を求めてきた
<6>タイムカードを同僚に押してもらった
<7>当日の朝に有給休暇の申請
<8>休職命令に応じようとしない
<9>急に、今日で辞めると言ってきた
<10>無断欠勤を続けていた社員がいきなり出社してきた
<11>競合他社の役員に就任していた
<12>遅刻した社員が、その日の残業代を請求してきた
<13>会社の金銭を横領していた
<14>成績不良社員の賃金を下げたら不満がでた

<1>女性社員からセクハラの訴えが

法令違反&社内秩序の破壊は懲戒処分の対象となります。下記の対応策をとってください。

  1. セクハラ防止のため雇用管理上の配慮を明文化し周知する。
  2. 就業規則に懲戒処分を盛込んだセクハラ防止規程を策定し周知する。
  3. 社内にセクハラ防止委員会を設置
  4. セクハラ事例集を回覧
    【環境型セクハラの事例】
    ・・・プライベートな質問をしつこく訊く
    ・・・家庭環境をしつこく訊く
    ・・・女性の髪型の変化を見て何があったのかと訊く
    ・・・水着のカレンダーを貼る
    【対価型セクハラの事例】
    ・・・仕事中「ありがとう」の言葉と共に肩を叩く
    ・・・すれ違いざまに体に触れる
    ・・・歓迎会の出席を強要、飲み会参加を強要
    【攻撃型セクハラの事例】
    ・・・誘いのメールを送る、メールで交際を迫る
    ・・・パソコンを教える時、後ろから抱きつかれた
    ・・・通勤時間を合わせて出勤、退社時間を待ちぶせ
    ・・・名前のからかい、トゲの有る噂をする
    ・・・暗に退職をほのめかす、口による暴力行為

<2>社内の男女交際で業務に支障

社内秩序を乱す男女交際は就業規則違反であることを事例で周知してください。

  1. 下記のような事例は服務規律違反であることを周知する。
    1. 私用メールを頻繁に交換する
    2. 業務上の連絡に似せて不要・不急な連絡メールを頻繁に打つ
    3. 休憩後の不在 etc
  2. 服務規律は、過去に社内で起きた事例を参考にして具体的に禁止条項を策定する。
  3. 複数回の注意を行っても改悛しない場合、懲罰委員会の決定を経て懲戒処分にする。

<3>私用でインターネットを使った

秘密情報漏えいは会社経営に重大な危機をもたらします。秘密情報管理は、企業として取り組むべき大きなリスク管理要因といえます。

  1. 社内規程の中に「秘密情報管理規程」を別規程として設け、ウィルス対策などを含め最新の情報管理体制を規定することが必要です。
  2. 服務規律や懲戒条文の中に「会社はインターネットの情報を不正使用がないかチェックすることができる」旨規定する事が必要です。
  3. 規程の中にはインターネット等への接続や、情報発信、情報収集等に際して注意すべき「基本方針」を定めておくべきです。
  4. 社内規程に定めても、社員の協力なしにはセキュリティ保持は困難ですが、会社としての基本姿勢や指針を示すことは重要です。
  5. 規程の周知を行っていても私用でのインターネット使用が行われた場合、懲戒条文に照らし処分を行いますが、制裁には幅をもたせておくことが必要です。また、過去に起こった事例とその対策を社内に周知し、注意喚起を常に行ってください。

<4>辞めた社員が顧客リストを持ち出した

個人情報を含む秘密情報漏えいは、会社経営に重大な危機をもたらします。秘密情報管理は、企業として取り組むべき大きなリスク管理要因といえます。

  1. 社内規程の中に「個人情報保護規定」と「秘密情報管理規程」を別規程として設け、ウィルス対策などを含め最新の情報管理体制を規定することが必要です。
  2. 就業規則上の対策としては、下記の事項を検討実施してください。
    1. 秘密情報の漏洩禁止は退職後も同様とすることを規定する。
    2. 入社時の誓約書に情報管理上の必要事項を網羅して誓約させる。
    3. 秘密情報を管理する部署への異動に際しては秘密情報管理に関する契約書を締結する。
    4. 退職時の金品の返還条項の中にデータチェックや名刺の返還等を盛込む。
    5. 更に必要な場合には、一定の条件の下に退職後の秘密情報管理に関する契約書を締結する。
    6. 懲戒解雇に該当する事由が発覚した場合の退職金の取扱等について規定し周知する。

<5>意味もなく時間外に会社にいた従業員が残業代を求めてきた

時間管理の基本ルールを会社として策定し、教育してください。管理職の方は部下が行っている業務の量と必要時間を正確に把握してください。これは会社が行うべき、社員の健康管理を含む安全配慮義務に直結する問題でもあります。就業規則上の対策として下記の事項を実施してください。

  1. 時間外労働は会社の業務上の命令あるいは許可の下に行うべきものであること。
  2. 管理職は「黙示の了解」などの例外を承認してはいけません。
  3. 事前の許可制を徹底し、時間外労働申請書とその報告書の提出でもって時間外手当を支払うこと。
  4. 緊急かつやむを得ない場合でも、事後速やかに報告書の提出を義務付けること。

<6>タイムカードを同僚に押してもらった

タイムカードの不正打刻は懲戒解雇の対象となる旨周知徹底してください。これは賃金支払に係る虚偽申請あるいは搾取に該当すると考えられるからです。従業員には下記の事項を周知してください。

  1. 就業規則中の懲戒条項の内容を周知する。
  2. 始業時刻と終業時刻の正確な意味を分かりやすく伝え、時間管理に関する会社の基本方針を周知する。
  3. その上でタイムカードに時刻を打刻する意味を明確に周知してください。

タイムカードの不正打刻が発覚した場合には処分は就業規則の照らし厳格に行ってください。

<7>当日の朝に有給休暇の申請

労基法第39条に定める年次有給休暇は、労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図り、ゆとりのある生活にも資することが立法趣旨となっています。
年次有給休暇は、労働者が付与された日数の範囲で、具体的な休暇の始期と終期を特定し、取得時季を指定したときに成立しますが、事業主の適法な時季変更権の行使を解除条件として発生します。
従って、規則に定められた請求期日までに事前請求し、事業主の承諾を得ることが事業の運営上必要です。下記の事項は最低限実施してください。

  1. 従業員が有給休暇の時季指定権を行使できる期限を定める。
  2. 会社が、有給休暇の時季変更権を行使する場合を具体的に規定しておく。
    1. 年中無休の場合、夏季休暇は交替制
    2. 繁忙時季を年間カレンダー等で明示しておく。
    3. 決算時期等の要員配置等を事前の周知しておき、交替要員手配が困難な事由等を周知しておく。
    緊急やむを得ない事由による場合、事後の振替ルールについても規定しておく。

<8>休職命令に応じようとしない

休職は、従業員としての身分を保有したまま、一定期間における労働義務を免除するものですが、会社が産業医等の意見聴取等を経て休職の必要を認めた場合には、本人との複数回の話合いをもって休職命令を発令してください。

  1. 休職命令を発令した根拠を明確に伝える。
    1. 事業主に課せられた安全配慮義務
    2. 産業医等の意見聴取の結果 など
  2. 休職期間中の連絡方法と傷病手当金の申請方法などを正確に伝え、不安を取り除く。
  3. 会社指定の医師の診断を受診するよう促す。
  4. その傷病が業務に耐えないほどであれば、安全義務上の配慮として会社指定医師等の受診を指示できる旨の判例も多く、従業員は従う必要があると考えられています。
  5. もちろん、就業規則等に受診の指示・命令ができる場合の規定を設け、周知することが無用なトラブル防止策となります。

<9>急に、今日で辞めると言ってきた

民法628条の規定により、従業員からの雇用契約の一方的な解除の申し出は少なくとも2週間前に行う必要があります。雇用契約の解除を申し出た従業員にも、雇用契約上の義務として誠実に会社の与えた業務を遂行する義務があります。従って、このような申し出があった場合には下記の事項を検討実施してください。

  1. 当該申し出には、合理的な理由があるのか否か就業規則に照らし話し合う。
  2. 感情的なもつれなど、退職を決意するに至った経緯等を親身になって聴き、翻意する余地がないか話し合う。
  3. 形式的ではなく、具体的に必要な業務引継期間を就業規則に定め、周知しておく。
    業務引継完了義務を就業規則に盛込んでおく。

<10>無断欠勤を続けていた社員がいきなり出社してきた

  1. ルール遵守を日頃から教育することはもちろんですが、事案が発生した都度、本人の合意の元に「始末書」を取ってください。
  2. 懲戒処分の対象は連続した無断欠勤だけではなく、断続的な無断欠勤も対象となる旨周知してください。
  3. 無断欠勤の従業員は解雇ではなく自然退職の扱いにしてください。
  4. そのためにも入社時に「無断欠勤の初日に退職の意思表示をしたものとみなす。」旨の誓約書を取っておいてください。
  5. 問題行動を繰り返す従業員であっても、使用者側には改善を諭し、教育指導する責任があります。

<11>競合他社の役員に就任していた

  1. 就業規則で定めても100%禁止はできないという点をまず認識してください
  2. 就業規則には役員就任や自営業を行うことは許可制とし、そのリスクを周知することも一案です。
  3. 最近はインターネットオークションやインターネット通信販売が流行であり、名義貸しや役員就任に伴う危険性等を、事例を交え周知しておくことも考えられます。
  4. 兼業を行った社員による機密漏えい等が合った場合には懲戒解雇も可能です。

<12>遅刻した社員が、その日の残業代を請求してきた

  1. 賃金規程にはノーワーク・ノーペイの原則を規定しているか確認してください。遅刻時間について賃金控除を行うことはノーワーク・ノーペイの原則により合法です。
  2. 時間外手当は法定時間(8時間)を超えた場合に発生します。合計で法定労働時間(8時間)働いた場合には、時間外労働の割増賃金は発生しません。
  3. 賃金規程には割増賃金発生の要件をはっきり規定しておいてください。(時間外勤務手当は、法定労働時間(8時間)を超えて時間外労働した場合に支給する。)

<13>会社の金銭を横領していた

  1. 会社の就業規則には服務規律がありますが、服務規律は懲戒処分(解雇を含む)と損害賠償の裏返しであることを周知してください。
  2. 従業員が退職願いを提出してきた場合、その「裏側にあるもの」に注目して下さい。
  3. 定期的な業務監査はもちろんですが、金銭を扱う従業員に対しては日頃の業務態度や素行をチェックしておくことも必要です。
  4. これは一度退職してしまったら懲戒解雇はできないからです。
  5. 通常損害賠償訴訟を提起する場合、立証責任は原告側にあるため、訴訟により損害額を取り戻すのは事実上困難です。
  6. 退職金の減額や不支給の事由を明確に就業規則に定めておいてください。

<14>成績不良社員の賃金を下げたら不満がでた

  1. 就業規則に賃下げの規定がない場合、使用者側が一方的に賃金を下げることはできません。
  2. 就業規則には降格・降職後の賃金の取扱を明確に定めておいてください。
  3. 公平・公正な評価制度に基づく降格・降職のルールを明確に定めておくことが必要です。
  4. 賃金体系も職務職能給制度を導入し、評価結果がどのように昇進・昇格に結びつくか、そのルールを周知することが従業員のモチベーションアップに資することになります。
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