労務管理の要点5…解雇・退職・雇い止めの基礎知識

労務管理の実務上、「解雇」に関するトラブルは非常に多いのですが、無用なトラブル防止には、事業主側が解雇を制限する法令・判例等を熟知することが必要です。無理な解雇予告をしてしまって行政官庁からの勧告等を受けるケースも発生しています。昨今では労働相談窓口の充実や権利意識の高揚等により、安易な解雇通告に対して不当な処遇であると反発して争われるケースも増加しています。
当事務所では様々な法令・判例等に準拠した対策をご提案いたしております。以下ではその一部をご紹介いたします。

<1>解雇とは
<2>解雇予告と解雇の法令上の制限
<3>普通解雇の基礎知識
<4>合意解約と辞職の違い(労働者からの退職の申出)
<5>退職勧奨はどこまで許されるか?
<6>有期雇用契約者の雇い止め
<7>勤務成績不良や勤務態度不良を理由とする解雇
<8>行方不明社員の解雇
<9>傷病者の解雇

<1>解雇とは

  1. 解雇とは、使用者と労働者の間で結ばれている労働契約を、使用者側で一方的に解約することです。
  2. 解雇は解雇に相当するような合理的な理由がなければできません。
  3. 手続的にも、少なくとも30日以上前に予告するか、平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払う必要があります。

<2>解雇予告と解雇の法令上の制限

  1. 労基法第20条により、解雇には下記の事項が義務付けられています。
    1. 30日以上前に予告すること。
    2. 又は、平均賃金の30日分以上を支払うこと。
  2. 解雇予告については、下図を参照してください。
  3. 解雇予告日算定フォームや労働契約期間満了日算定フォームにより解雇予告や契約期間満了日の通告は正確を期する必要があります。
  4. 解雇予告が除外される場合とは下記のような場合です。
    1. 天災事変その他やむを得ない事由で事業の継続が不可能となり、所轄の労基署長の認定を受けたとき。(火災による消失、地震による倒壊など)
    2. 労働者の責に帰すべき事由によって解雇するときで、所轄の労基署長の認定を受けたとき。(解雇予告除外認定)→この認定は、解雇の意思表示をなす前に受けるのが原則です。(横領、障害、14日以上の無断欠勤など)
  5. 解雇予告などを行わずに解雇することができる者は次表の通りです。
    解雇予告せずに解雇できる者 解雇予告が必要となる場合 ポイント等
    日々雇い入れられる者 1ヶ月を超えて引き続き
    使用されている場合
     
    2ヶ月以内の期間を定めて
    使用される者
    契約期間を超えて引き続き
    使用されている場合
    2ヶ月以内の臨時雇用者として雇用契約を結んで下さい。契約の更新は絶対にできません。
    季節的業務に4ヶ月以内の
    期間を定めて使用される者
    契約期間を超えて引き続き
    使用されている場合
    博覧会や大規模イベント等の臨時雇用者が該当。
    試みの使用期間中の者
    (試用期間中の者)
    14日(暦日)を超えて引き続き
    使用されている場合
    就業規則に試用期間等の定めが必要です。
    ※2ヶ月以内の臨時雇用の場合、顧問先様には「一時労働契約書」の書式と留意事項を記載したレジュメをお渡ししています。書式等は当事務所へお問い合わせください。
    解雇予告日算定フォームや労働契約期間満了日算定フォームは当事務所へお問い合わせください。
  6. 解雇には下記の法令上の制限があります。
    1. 解雇権濫用の一般的禁止
    2. 解雇時期についての制限(療養後、産前・産後等)
    3. 手続についての制限(解雇予告)
    4. 就業規則への解雇事由の記載
    5. 解雇理由証明書の発行(請求があった場合)
    6. 育児・介護休業取得に対する解雇禁止
    7. 男女雇用均等法違反に関する援助申請に対する解雇禁止
    8. 調停を申し立てたことに対する解雇禁止

<3>普通解雇の基礎知識

  1. 普通解雇は、懲戒解雇(秩序違反等に対する制裁)以外の解雇であり、労働者が雇用契約の基づく労務提供ができない場合(疾病、能力不足、適格性欠如など)と使用者側の経営上の必要に基づく場合(経営危機による人員整理など)です。
  2. いずれの場合も、解雇予告の手続は必要となります。
  3. 解雇権の濫用とみなされないためにも、客観的かつ合理的理由が必要となります。
  4. 整理解雇については下記のシートを参照してください。

<4>合意解約と辞職の違い(労働者からの退職の申出)

  1. 労働者からの退職の申し出には合意解約の申し入れと辞職の意思表示がありますが、そのいずれであるかにより撤回の可否という点で大きな違いが生じてきます。
  2. 労働者から退職の申し出がなされた場合、間違いなく雇用契約を終了させる旨の意思が客観的に明らかな場合とは次のような場合です。
    1. 辞職又は退職願いを提出した。
    2. 使用者側の慰留に応じようとしない。 など
  3. 上記の場合は辞職の意思表示と解することができ、辞職願の撤回には使用者側の同意が必要となります。
  4. そうでない場合には合意解約の申し入れと解するのが妥当です。
  5. 一時的な衝動から出たものもありますから、退職の意思表示を明確な形(退職願いの提出とその承認)で残すことが肝要です。

<5>退職勧奨はどこまで許されるか?

  1. 退職勧奨とは、使用者が労働者に対して労働契約の合意解約を申し込む或いは申込の誘因となる行為を行うことです。
  2. 様々な事項の総合的考慮で判断することになりますが、特に退職勧奨を行う場合は、その回数や代償措置(退職手当の上積みや再就職あっせんなど)があるか否かがポイントになります。
  3. 退職勧奨を行っても労働者が応じない場合、様々な手段で嫌がらせを行ったり、退職願いの提出を度を越して促すなどの行為は違法性が高いといえます。
  4. 任意の退職を促す退職勧奨と、違法な退職強要との線引きは必ずしも明確ではありませんが、退職勧奨を行うに当たっては下記の点に注意する必要があります。
    1. 多人数で一人の労働者に会う形をとらない。(脅迫と受け取られる)
    2. 数回の範囲を超えて繰り返し面談をしない。(同上)
    3. 密室で会わないようにする。(同上)
  5. この他には、退職金の優遇措置があるか否かは重要な要素となります。
  6. 違法な退職強要がなされた場合には、使用者は不法行為責任(損害賠償責任等)も負うことになります。

<6>有期雇用契約者の雇い止め

  1. 民法の原則により、有期雇用契約の場合、当該契約期間の満了まで労働契約は存続しますが、下記の点について十分留意してください。
    1. 期間の定めのある労働契約は、当該契約期間の満了により終了する。
    2. 但し、a:期間経過後も労働者が労働を継続し、b:使用者が異議を述べないときは、同一の契約が更新されたと解する。(黙示の更新)
  2. 上記1の通り、期間の定めのある契約は当該契約期間の満了により終了しますが、何度も更新を繰り返した労働契約は、期間の定めのない契約と異なることがなくなり、更新の拒絶は「解雇」となり解雇予告の手続が必要となります。
  3. そのため、更新の拒絶を行うには「相当の理由」が必要となり、それがない場合は自動更新されると解されます。雇い止めに関する基準の図解は下記を参照してください。
  4. 有期雇用を行うには下記の点に留意してください。
    1. 臨時的な雇用であるのか?常用的な雇用であるのか?
    2. 契約更新の有無について、書面で明示しているか?
    3. 契約更新の判断基準を明確に示しているか?
    4. 雇用継続を労働者に期待させる言動等を示していないか?
    5. 複数回の更新をした場合でも契約更新の最終回を明示しているか?
      (今回が最後の契約更新であり、次回の更新はしない旨通知している。など)

<7>勤務成績不良や勤務態度不良を理由とする解雇

  1. 勤務成績不良や勤務態度不良は、労働者の労務提供義務の「不完全履行」であり、適格性欠如も雇用契約上求められる労務提供の不完全履行と評価され、解雇理由となります。
  2. これらが解雇権の濫用とされないためには、下記の点に留意してください。
    1. 必要職務能力や期待される職責等を明示しており、その達成レベル等を客観的に見ても解雇相当であるとされる合理性が必要です。
    2. 一つ一つの事案は些細なものであっても、それらが恒常的に繰り返され、総合すると勤務成績不良が重大であると判断される場合などが解雇理由として合理性をもつ場合です。
    3. 使用者の再三に亘る注意指導にも関わらず、一向に改めない場合などが該当します。
    4. けん責などの処分を重ね、本人に悔悛の機会を与えても直らなかった等の事実を確認できる出勤状況や勤務態度の記録、並びに始末書等の記録が大切になります。

<8>行方不明社員の解雇

  1. 最近増えてきたケースとして、行方不明になった社員の解雇に関する問題があります。
  2. 行方不明が一定期間続き、退職の意思表示をしたと認められるような場合であれば任意退職として扱うことが可能です。
    1. 入社時の誓約書に退職の意思表示に関する条文を入れる。
    2. 社会保険・雇用保険の資格喪失に関しても規則を整備しておく。
  3. 一般的には、就業規則上「無断欠勤が14日以上に及んだとき」という形の懲戒事由を定める場合が多く、無断欠勤は企業秩序に対する影響が大きいものといえますから、これらに該当する場合には、一般に懲戒解雇が認められる傾向にあります。
  4. しかし、事故にまき込まれたり意識不明で連絡ができなかったというやむを得ない理由がある場合は別です。

<9>傷病者の解雇

  1. うつ病等の精神障害と診断されて職場復帰が困難な場合に解雇しうるか?という問題は能力不足の一つのケースということになりますが、特有の問題があります。
  2. 通常は、疾病のため就労が困難な場合、一定期間の休職期間を置き、なお職場復帰が困難な場合に解雇(または自然退職)に至るというケースが多いようです。
  3. ポイントは「職場復帰が困難」といえるかということになりますが、これは医師の判断に依存することになりますが、医師により判断が異なるために慎重に対応を進める必要があります。
  4. いたずらに紛争を生まないために、予め就業規則上に「会社指定の医師の診断を受けるものとし、その判断に基づくものとする」などの規定を設けておくことが考えられです。
  5. 問題となるのは、従来と同様の就労はできないが、配属先を変えれば就労可能であるという場合に、使用者側で配転等の対応をしなければならないという点です。

解雇は労働者の生活を脅かすことになり得ますので、慎重に事案処理を行う必要があります。労働紛争として惹起される前に、ケースバイケースで当事務所へお問い合わせください。

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